事業名:国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED)
新興・再興感染症研究基盤創生事業 海外拠点活用研究領域
研究課題:下痢症原因細菌の完全ゲノム配列を用いた可動性遺伝因子との関連解析
~ヒト腸内における薬剤耐性伝播ポテンシャル~
研究代表者:黒田 照夫(広大院医系)
研究分担者:丸山 史人(広大学術・社会連携)、三好 伸一(岡大院・医歯薬)、
今村 大輔(法政大)、森田 大地(広大院医系)
期間:令和2年~令和5年度(3年間)
【概要】
薬剤耐性菌は今や世界規模の問題となっており、今行動を起こさない限り2050年には薬剤耐性菌による年間の死者数は世界で1000万人にも達するとも予想されています。薬剤耐性菌の蔓延を阻止するためには、細菌そのものが広がらないようにすることが重要ですが、それと同時に薬剤耐性に関係する遺伝子そのものが広がらないようにすることも重要です。しかし遺伝子の伝播がどのように起こっているのかについて詳細は明らかになっていません。
このような状況の中、私たちのグループは「下痢症原因細菌の完全ゲノム配列を用いた可動性遺伝因子との関連解析」という研究を国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による支援を受け進めています。
この研究では、岡山大学がインド・コルカタ市に設立したインド感染症共同研究センター(インド拠点)の協力を得て、隣接するNational Institute of Cholera and Enteric Diseases (NICED)において分離される下痢症原因細菌(コレラ菌、赤痢菌、病原性大腸菌、カンピロバクター)を題材とした研究を推進します。次世代シーケンサーを駆使して分離した細菌の遺伝情報、特に可動性遺伝因子に着目して解析をすることで、同種の細菌同士はもちろんのこと、種が異なる細菌、さらにはヒトの腸内に生息する常在細菌との間での遺伝子伝播がどの程度起こっているのかを明らかにします。そしてどのような遺伝子とどのような細菌の組合せの時に伝播の頻度が高いのかを推定し、その伝播を防ぐことができるような創薬の開発につなげます。
この研究は、比較的狭い地域で同じ時期に複数の細菌による下痢症患者が存在しないとうまく進めることができません。インドでは下痢症患者も多く、NICEDにはこのような患者がいるため、インド拠点の協力が不可欠です。これらの研究を進めることで、インドにおける薬剤耐性の蔓延阻止に有益であるだけでなく、日本を含めた世界中の国々における薬剤耐性の問題を解決に導くことができると考えています。